具日記

2004-09-02

キレンジャー

今日は書く事がほぼ無いので、今日2回目読んでたブコウスキーの本から55章を。

新聞で仕事を見つけた。 洋服屋に雇われたのだが、その店はマイアミではなくマイアミビーチにあった。 だから、毎日二日酔いの頭を抱えて、海を越えなくちゃならなかった。 バスは海に突き出た、ものすごく狭いセメント道を走った。 ガードレールも何もなくて、ただ道路だけ。 運転手は座席に背をもたせかけていて、バスは海に囲まれた狭いセメント道を轟音を立てて進んだ。 バスに乗った二十五人だか四十人だか五十二人だかの乗客は、運転手を信頼していた。 だがおれは決して信じなかった。 たまに運転手が新顔だったりすると、おれは思った。 いったいやつらはどうやってこのバカを選んだんだ? おれたちの両側は深い海で、運転手のほんの一瞬の判断ミスでおれたちは死ぬ。 バカげてる。 例えばやつが朝、夫婦喧嘩したとしたらどうだ? 癌だったら? 神の姿を見たりしたら? 歯が痛くなったら? なんだってあり得る。 そしたらやつはやってしまう。 おれたちを乗せたまま海に突っ込むんだ。 おれにはわかってる。 もしおれが運転手だったら全員溺れさせちまうかもしれないとか、ひょっとして溺れさせたほうがいいかなとか、ずっと考え続けるだろう。 そして、そんなふうに考えた後、ただの可能性は現実に変わる。 ジャンヌ・ダルクの乗ったシーソーの反対側にはヒトラーが坐っている。 善と悪との昔ながらの物語だ。 しかし、運転手の誰も、おれたちを乗せたまま海に突っ込んだりはしなかった。 やつらはそのかわり、車のローンや野球のスコア、髪型や休暇、浣腸やら家族旅行やらのことを考えていた。 人数ばかり多くても、本物の人間なんていやしない。 おれはいつも吐きそうになりながら、それでも無事に職場に着いた。 以上、ショスタコービッチよりシューマンの方が無難であることが証明された、ってなもんだ・・・・・・。

うんうん◆◇◆

posted at 07:54:19 on 2004-09-02 by aseda - Category: 具日記

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